空腹は認知症のクスリ?!|エルムクリニック 内科・消化器内科|長野県飯田市の内科・消化器内科

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空腹は認知症のクスリ?!

元旦から二日間、伊豆のピポクラテック・サナトリウムというところで過ごしました。ここは、にんじんジュース断食(正確には人参りんごジュース)を主とする保養所で、30代の終わり頃、教師をしていた頃から利用しておりました。婦人科の調子が悪かったので、夫が見つけて私に勧めたのがきっかけです。ここの施設の詳しいことは下記URLを見てくださいね。

https://www.h-sanatorium.com/about.html

その後、子宮筋腫がわかり、子宮筋腫の自然治癒を狙って2週間のにんじんジュース断食をしたことがあります。断食が終わる頃、大量の悪臭を放った帯下がありました。今思うとデトックスだったのでしょうね。

子宮筋腫の方は自然退縮とはいかず、いまだに私の子宮に頓挫していますが、肌と髪がつやつやになりました。教師時代は時間的に余裕があり、可能な限り、玄米菜食の自然食で過ごしていましたが、医学部入学、医師生活は心身共に余裕がなく、過食したり、ピザ、お菓子、大量飲酒など不摂生な食生活をすることも多くなり、そのためかどうかわかりませんが、10年くらい前からアトピーに悩まされるようになってしまいました。にんじんジュース断食をする余裕はありませんが、そろそろ、少食、自然食に戻って開業前に体調を整えることが必要かな。

さて、今回はせっかくのお正月なので、にんじんジュースではなく、健康食コースにしました。向かって左の写真は1月2日の朝食です。ちなみに、ここでは食事は10時と17時の1日2回です。健康食コースを選んだ場合、朝はにんじんジュース一杯なんです。

これって生理にかなっていると思いませんか?

早起きして農作業している農家の方ならいざしらず(飯田にはそういう方も多いかもしれませんね)、寝起きで食欲のないとき無理に朝食を食べるより、活動してそろそろお腹が空いてきたときに食事、そしてお昼は飛ばし、夕食は遅くならないうちに食べて、それ以降は食べない。

このリズムは調子が出るんですね。

でも、勤務日はそういうわけにもいかないので、休みの日はこのリズムで食事をしてます。みなさんも、時間の許すときは、このリスムで食事を取ると体調がいいですよ。

ちなみに平日は、朝果物などで軽く糖質を補い、10時頃になると状況が許せばチョコレートなどをちょっとつまみ食い、昼は原則玄米食のお弁当にしています。夜は、蒸し野菜+魚の缶詰またはチーズで、無添加ワインまたは純米酒というパターンにしています。このパターンを守っているときは、体調がいいです。

 

ちなみに、サナトリウムに来た目的は、

1.あることで原稿作成しなければならず、喧騒を離れて引きこもって集中して執筆にとりかかりたかった。

2.患者さんへのアドバイスで、石原先生の理論を取り入れる予定もあり、お話を聞きたかった。

3.今年は家庭の事情で、お正月料理を作れなかったので、ここで美味しいお正月料理を味わいたかった。

でしたが、1~3すべて満たすことができました。今回は2について少しお話することにします

チェックインをすると、受付のところに「空腹は認知症のクスリ」という本が目に付き、思わず買ったのです。空腹が認知症予防に効く理由の一つに、空腹時に胃から分泌されるグレリンというホルモンが脳の海馬という記憶を司る領域に入ると記憶障害が改善されるというのです。これ、医師生活14年目になる私も初耳でしたね。

サナトリウムでは、日曜日の朝に行われる石原先生が健康講演を行うのですが、一見漫談をしているように見えながら、毎回違うトピックスを混ぜているんです。もう何千回も講演をしているのに、引き出しが切れないのは感服です。ここでも、このグレリンというホルモンの話をしていました。

少し専門的な話もしましょう。面倒と思う方は、適当に読み飛ばしてくれて構いません。ただ、空腹時に分泌される胃のホルモンが、認知症のクスリになるのだ、と認識していただければ、いいのです。

海馬領域に入ったグレリンは、海馬体の神経細胞に結合して、そこで樹状突起でのシナプス形成と長期増幅を促進し、空間学習記憶の向上と関連するというのです。さらに、グレリンというホルモンは成長ホルモンの分泌促進、心血管組織に作用して、血圧低下、一回心拍出量の増加にも役立つようです。極端な栄養不足は問題ですが、時々空腹状態を作るのは、脳にも心臓にも、成長にもよさそうです。

さらに、アルツハイマー型認知症はアミロイドβというタンパクが脳に蓄積することが原因といわれているのは多くの方がご存知でしょうが、そのアミロイドβ分解酵素は、インスリン分解酵素でもあるのですね。インスリンが分泌されすぎる状況になると、アミロイドβを分解される酵素が不足するわけで、インスリンをあまり分泌させない空腹状態は認知症予防になるのでした。

その他、少食によってアンチエージング効果のあるサーチュイン遺伝子が働いたり、オートファジーによって、細胞の老廃物が貪食されたりするわけで、間接的に、老化である認知症の予防効果があるわけです。

私が医師になろうと思ったきっかけは、医療行為は少なからず副作用が伴うわけで、なんとか自然治癒力を活かした医療ができないのかな、と考えていたからなのでした。

誤解のないように断っておきますが、当クリニックではいわゆる一般的な西洋医学を行う予定です。上記のような話は、患者さんへの生活指導の中で必要に応じて、または雑談の中でしていく予定です。よってこのブログは、「私の健康法」のカテゴリーの中に入れました。皆さんの健康法の参考にしていただけたら幸いです。

P.S.高齢者は、クワシオルコル(低たんぱく症)やフレール・サルコペニア(心と体の働きが弱くなってきた状態)の心配もあるので、断食よりも、時々空腹を楽しみ、質のいいものを少しずつ取るのがいいでしょう。サナトリウムでも、70歳以上の方には半断食(玄米重湯を混ぜたにんじんジュース断食)をお勧めしているようです。