蟹江医院の歴史と蟹江孝之先生の思い出|エルムクリニック 内科・消化器内科|長野県飯田市の内科・消化器内科

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蟹江医院の歴史と蟹江孝之先生の思い出|エルムクリニック 内科・消化器内科|長野県飯田市の内科・消化器内科

蟹江医院の歴史と蟹江孝之先生の思い出

最初、開業する予定だったところは、前任者の移転に伴うもので、東京都三鷹市、母校杏林大学の近くだったのです。医学部受験を考えていた時点から、心の隅にゆくゆくは開業したいとなんとなくイメージしていたわけですが、それが現実になって嬉しいと思う反面、杏林大学での研修医時代、ほとんど医者らしいことをやってこなかったこと、また10年も母校から離れていて、スタッフを集めるのも、疑問点を聞くこともほとんどあてのない状況で不安がありました。それでも、最初に私に声をかけてくださったクリニックの先生、その話を持ってきてくれた友人に対してもとてもありがたい気持ちがあり、この縁を大事にしようと話を少しずつ進めてきました。

一方で、医師として一番長く過ごしたのが飯田であり、そこで開業できたら一番いいのかな、と思っていました。健和会に勤務していた頃、雑談の中で、「蟹江先生のところでできたら一番いいのかもしれないけれど、『ごめんください、私が蟹江先生のあとクリニックをやっていいですか?』とも言えないしね」などと仲間に話したことがありました。

ところが3年後、本当に「ごめんください」と言うことになりました。というのは、去年の8月終わり頃、開業予定だった三鷹のクリニックのすぐ近くに競合するクリニックが10月にOPENするという話を聞いたからだったのでした。そのクリニックを支援していのは、私の医大時代の同級生で、彼らとの関係は良好で、競争するのは抵抗がありました。その頃、たまたま、健和会時代の同僚と食事していて、「蟹江医院がテナントに出ている」話を聞きました。その足で蟹江宅を訪問し、チャイムを押したわけです。少し経って、蟹江夫人が二階の住居から降りてくださって、どこの馬の骨をわからない我々(開業を応援してくれている友人と一緒に訪問したのです)を歓迎してくださいました。

その後、トントンと旧蟹江医院跡地に開業するお話が進みました。

お元気で活躍されていた蟹江先生が突然ご逝去され、ご家族の悲しみと混乱はかなりのものだったでしょう。利子夫人は蟹江先生が亡くなられたことをなかなか公表できなかったようです。少し落ち着かれた頃、私が訪問したわけなのでした。

「すべてのことに時がある」と改めて感じました。

私は健和会時代、蟹江先生の紹介状を何度か受け取ったり、蟹江先生が亡くなられた後、蟹江先生の患者さんを外来で診たことはありますが、残念ながら直接のつながりはありません。けれど、蟹江先生のご家族との縁で飯田で開業することになったわけで、蟹江医院のことを心にとめておきたいと思っております。娘さんに連絡したところ、蟹江先生の奥様の利子様、二人の娘さんが、蟹江医院と蟹江先生の思い出を書いてくださいました。以下にその文を載せます。

 

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飯田市出身の医師、蟹江婦美(蟹江孝之先生のお母様)は、夫の誠三と共に当初、東京の自由が丘で蟹江医院を開業しておりましたが、第二次世界大戦の空襲で医院が消失、故郷の飯田へ医院を移す決心を致しました。その後、誠三は若くして結核で亡くなり、婦美は女手一つで診療を続けながら子供5人を育て上げました。
1985年、婦美が高齢となった事により、東京で医師をしていた次男、孝之が帰郷し、一緒に医院を経営する運びとなりました。婦美亡き後、孝之は飯田市医師会会長や医療原稿執筆の務めなどに追われつつも、患者様第一の姿勢を崩さず、懸命に診療をしておりました。また、趣味も持ち充実した人生を送っていたと思います。特に、花の美しさや飯田の自然をカメラで撮り写真にすることが好きで、飯田医師会写真クラブの先生方との交流を楽しんでいたのが印象的です。
孝之は、日本医科大学内科、木村教授の下で循環器を学び、中でも心臓は得意分野でありました。2019年、その心臓の病により倒れたことは大変無念だったと思われます。しかし、良き先生方、多くの患者様に支えられ、亡くなる直前まで診療を続けられたことには感謝しているに違いありません。婦美の代から、「蟹江先生は患者の話をよく聴き、納得する説明をしてくれる」と患者様に慕って頂いておりました。
この度、エルムクリニック開院に当たり、婦美や孝之の愛したここ飯田で、患者様に寄り添う診療が継続されることを望んでおります。(蟹江孝之 妻:利子)
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利子様、ありがとうございます。蟹江先生のキャリアには全く及びませんが、患者様に寄り添う診療、生涯現役は蟹江先生にならっていきたいと思います。