がん免疫療法を始めてみて
- 2025年2月12日
- クリニック業務
立春になってから、かえって寒さが厳しくなってきましたが、晴天の日が続いてますね。
寒さももう少しの辛抱でしょう。今のうちにおでんや鍋物を楽しんでおきましょう。
去年の3月11日、おでんの季節からふきのとうの季節になったころだった。
当院の診療が終了するころ、クリニックに灰色のスーツを着た色白の若い女性が現れた。
同仁がん免疫研究所からということだった。
お話を聞いているうちに、うちでもその女性の持ってきた「6種複合免疫療法」を取り入れてもいいかな、という気持ちになってきた。
実は医師になる前から、「がんの代替療法」に興味があり、自然医療を提唱している御茶ノ水の森下クリニック、自然医療ツアーに参加してゲルソン療法をしている病院を見学したりしてきた。私に開業を持ってきた友人は、そういう「自然医療をやらないのか」とときどき私に問いかけてきたが、やってみたいと思うものの実績がなく、「加工肉の多くは発がん物質があるからなるべく避けたほうがいいですよ」、「糖質は目の敵にせず、未精白のものを適量とりましょう」など、なんとなく話すことにとどまっていた。
実はがんに罹患していない人でも、1日に数千個のがん細胞ができているが、がんが発症しないですんでいるのは、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)を中心とする免疫システムのおかげなのである。6種免疫療法は、がん排除に貢献している6種類の免疫細胞、キラーT細胞、NKT細胞、NK細胞、γδT細胞、樹状細胞、ヘルパーT細胞を増殖させ、さらにがんの共通抗原であるWT1ペプチドを加えて、自身のがんへの攻撃力をたかめる療法である。(増殖はがん免疫研究所で行う)
出典 左図 「基礎から学ぶ免疫学」山下 正克著 羊土社 P.90 自然リンパ球による細胞傷害と細胞性免疫の誘導
右図 「がんがみえる」メディックメディア P.161 がん免疫サイクル
代替医療とは違うが、自身の免疫機能を使うという点で共感できた。
またマンネリ化しやすいクリニック業務に新鮮さを与えるにも有用と思われた。
1も2もなく取り入れることに賛同したのだが、厚生労働省の許可をとったりする手続きに時間がかかり、結局実行できるようになったのは10月で、免疫療法を施行した最初の患者さんがいらしたのは11月だった。最初の患者さんのときは同仁がん免疫研究所の方に随分助けていただいだ。その後、問い合わせ4件、施行にすることになった方1人という状況である。
この療法をするにあたって、施行を妨げていることが見えてきた。
1.診断した病院に理解していただいて、連携しながら施行することが望ましいわけだが、理解が得られないことがあること
2.がんの進行により、全身状態が危険であり、施行が困難なことがあること
3.費用が高額
4.培養に3週間かかり、輸送システムから多くは4週間ごとのサイクルになるが、がんの種類によってはその間のがんの進行が気になること
といろいろ考えさせられることも多かったですが、なんとかいい方向に進めるよう動いております。
標準治療の適応でないと言われたり、余命宣告を受けた方など、この療法にかけてみたい方がいらっしゃったら、ご相談くださいね。