肝機能異常の原因・・・節酒のための薬処方できます!
- 2023年10月13日
- クリニック業務
内視鏡業務をしている関係で、消化器内科医とみなしていただき、勤務医時代の外来に検診で肝機能異常(肝臓は消化器に属する)を指摘された患者さんが時々回ってきた。
薬剤歴(薬剤性の肝障害がないかどうか)、飲酒歴、海外渡航歴(A型肝炎など海外で罹患する病気の可能性があるかどうか)を聞いた上で、A,B,C,E型肝炎、自己免疫性肝炎の可能性がないかどうか血液検査をし、腹部エコーにて肝臓を中心とする肝胆膵領域の検査を施行していた。クリニックを開業してからも、検診で肝機能異常を指摘された方がこられるが、同様にしている。健和会時代も、クリニックを開業してからも、一番多いのが脂肪肝による肝障害、次がアルコール性肝障害である。エルムクリニックを開業してからも、それは変わらない。アルコール性の肝障害の多くは禁酒、節酒により、速やかに改善するためか、アルコール性の肝障害の疑われる方は、二次検査の前に禁酒、節酒するケースも少なくないため、二次検査時には正常に戻っていることも少なくない。
「どうも、肝機能が悪いのはお酒のためだったようですね。禁酒や節酒を続けてくださいね」と笑いながらお話する。
脂肪肝が原因の人には、7%の減量を指示する。標準体重にまで落とさなくても、例えば体重が100Kgある人は7kg落として、93Kgにすれば、脂肪肝が改善するらしい。脂肪肝の方、ダイエット頑張りましょう。
B、C、自己免疫性肝炎については、古巣の健和会病院に肝臓専門医が二人いらっしゃるので、そちらに紹介している。今はいい薬が出てきて、それらの肝炎に罹患しても肝硬変→肝癌のコースを免れる人も多くなりそうだ。
なお、注射針を使い捨てにし、輸血用血液のチェックが厳しくなったため、B,C肝炎が減ってきたため、脂肪肝、アルコール性肝炎による肝機能障害、肝硬変の割合が増えてきたようだ。ちなみに2014年では、アルコール性による肝硬変が24.9%、脂肪肝が9.1%である。この割合は、B型、C型肝炎の減少につれ、増えてくることが予想される。診察時の印象とは違ってアルコール性の肝硬変のほうが多いのは、肝臓へのダメージがアルコールのほうが大きいこと、重症のアルコール肝障害の方は精神科や基幹病院の消化器内科など専門医に診てもらっており、検診異常から診断されることが少ないためと思われる。
ところで、C型肝炎は使い捨ての注射針、輸血時のチェックにより激減すると思われるが、B型肝炎はそうでもない。
というのはB型肝炎は感染力が強く、体液を通じても感染し、性感染症でもあり、性行為についてフランクになった現在、そちらの経路で感染することが少なくないようである。なお、B型肝炎はキャリアになりやすいため、母子感染も感染経路の一つである。よって生まれながらにB型肝炎ウィルスを持っている人もいる。
ちなみに、B,C肝炎、梅毒の検査は内視鏡検査前には保険適応があります。内視鏡検査前のそれらの検査では必須ではなくなったため、当院ではそれらの検査を施行してはいませんが、前述のように保険適応があるので、申し出てくだされば検査を施行しますので、心配な人や一度も検査をしたことがない人は、この際調べてみたらいかがでしょう。なお、B型肝炎ワクチンをご希望の方は申し出てくださいね。予防効果は高いです。
話をアルコール性肝機能障害の話に戻しましょう。
実はアルコール依存やアルコール性の臓器障害の治療に使われるアルコールが飲めなくなる薬は、少し前まで精神科医しか処方できませんでした。が、節酒のためのお薬、ナメルフェン塩酸塩(商品名セリンクロ)がe-learningを受けた医師なら処方できるようになりました。従来のアルコールが飲めなくなる薬ではなく、少量のお酒でたくさん飲んだ気になる薬です。例えば、日本酒1合飲んだら、3合飲んだ気分になることのできるお薬です。
当院では肥満外来をやっている関係もあり、アルコール性肝機能障害の人でだけではなく、過量飲酒のため過体重になっているケースも見られます。よって、私はこの薬を処方できるようになるため、早速e-learningを受けました。自分がアルコール依存、過量飲酒に陥っていると思われる方、ぜひ相談くださいね。