内科開業医は何でも屋の家庭医|エルムクリニック 内科・消化器内科|長野県飯田市の内科・消化器内科

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内科開業医は何でも屋の家庭医

私が医学部に入学したころ、将来のイメージとして

「今日はどうなさいましたか?」で始めるかかりつけ医としての開業医の姿があった。

入学後、欧米に出産(正常分娩)~看取りまでを行う家庭医なる存在があることを知った。それは理想の医療と思え、将来の留学を夢見てせっせと英会話に励み、研修病院も海外の留学コースがあるところを何箇所も受けた。

今から思えば足が悪く年も取っている自分が、競争率の高い研修病院で取ってもらえるはずもなかったのだが、当然のことながらことごとく落ちた。結局母校で初期研修を受けたのだが、よく解釈すればいたわりというべきなのだろうが、私だけ他の研修医と違うプログラムで、研修の内容は見学とレポートという科が多かった。「先生は、体を使うより、頭を使いなさい」とのことだったが、元の専門の数学ならいざ知らず、医療は実践であり、動けないなりに手足を使わなければ、仕事を覚えられるはずもなかった。研修を始める前は、糖尿病・内分泌あたりを専攻して、かかりつけ医となろうと思っていたが、研修医として回った中で、楽しかったのは消化器外科と救急科だった。二つの科とも私にも実践を経験させてくれたことが大きかったのかもしれない。自他共に描いた予想とは違って、「医療においては、手足を使う分野が好きなのだ」と悟った。

さて、一般に言われている研修医とは初期研修医のことで、プライマリ・ケアの基本的な診療能力を修得するために、平成16年度(2004年)から義務化され、複数の科をローテーションで回る。その後、多くの医師は自分が専攻したい分野に後期研修医として入る。後期研修を受ける段で、楽しかった消化器外科を専攻しようか、それとも学生時代に思い描いていた家庭医を専攻するか、4か月間悩んだ。母校の消化器外科の説明会はもちろん、がんセンターの消化器外科にも足を運んだ。未練があったが、すでに55歳。「外科に行くのはさすがに無謀かな」と家庭医コースをいくつか受け、そのうちの一つに拾っていただいた。

しかし、私のイメージする家庭医と日本での家庭医コースの家庭医とは少し違うな、と感じた。私のイメージする家庭医とは、幅広い年齢層の方に対応する医師、風邪、腹痛などの内科的な軽い不調から、ちょっとした怪我、ちょっとした皮膚のトラブルなど日常的な健康上のトラブルに対応する医師、いざとなったら救急対応もして2次、3次救急につなぐことができる医師である。その頃の自分には、日本の家庭医コースは地域医療(もちろん大事である)と「専門医と違う家庭医の素晴らしさ」を強調する面が感じられた。何よりも、私自身が初期研修で習得したことが少なすぎて、知識的にも、技術的にも家庭医である前に、医師として対応できなかった。急性期医療を学ぶために派遣された病院で始めた内視鏡の技術も極めたいという思いがあった。家庭医の指導者は素晴らしい先生であったが、双方の気持ちが一致して、家庭医コースを中断することにした。その後複数の病院を放浪して、ようやくひとり立ちできるようになった。

去年の4月に開業してからは、自分の思い描いていた家庭医に取り掛かることができるようになったと感じている。コロナ、インフルエンザ、風邪症状、検診異常、腹痛、下痢、便秘など内科医、消化器内科医としての対応の他、内視鏡業務が診療のメインであるが、時折、不定愁訴、皮膚トラブル、整形外科的トラブルについての相談も受ける。病院に到着したあとで急変し、救急対応することもたまにある。

受付の方は、「材木に刺さったみたい」、「婦人科が腫れている」などの問い合わせを受けると、私の顔を見て、「どうします?」と恐る恐る聞く。緊急に他科に送らないと危ない場合は別として(そのようなケースには今のところ遭遇していない)、基本的に受けることにしている。が、今まで3回断ってしまった。一度は、「耳の中になにか入った」というトラブルがあり、他のところがせっかく当院を紹介してくれたのに、耳鏡がないので断らざるを得なかった。

 悔しかった。小児はもちろんのこと、成人でも発熱の原因が中耳炎ということがある。耳鏡を用意しなければとは思ってはいたのだが・・・まさに、「備えあれば憂いなし」の反対である。耳鏡をやっと購入した。筋力、麻痺の有無を調べるのに、握力計も欲しいとそれも購入した。

私が思い描く家庭医は、全科診療+予防医学である。全科診療とは、全部に対応する医師であるが、全部を抱え込む医師ではない。放浪していたころ、一度見学したことのある松前病院の木村先生の考えに近いものがある。(下記URL参照)

実は、「求められたら、基本的に断らない姿勢」というのは、私の心の中だけにあり、スタッフにもきちんと話していません。

今回のブログは、私の方針を皆さんにお伝えするとともに、スタッフにも知っていただくために書きました。

日々の診療をしながら、知識、器具ともに準備していきますので、よろしくお願いします。

「全科診療医(何でも科の医師)」の認知度はいかに?