院長自ら患者になって生活習慣病管理を実験中
「医者の不養生」と言われるが、開業してからは、歯の詰め物が取れたときに歯医者に行ったり、大腸ポリープフォローで古巣の昭和伊南に行ったくらいで、ほとんど病院受診をしていなかった。
それでも、アルコールの飲み過ぎはさすがに気になり、時々看護師さんにお願いして肝機能のチェックはしていた。幸い、肝臓は丈夫なようで、肝機能は今のところ正常である。
今年に入って、「特定健診くらい受けようか」と飯田市からの案内状を引っ張り出し、代診してくださっている松岡先生に診察医になっていただいた。
血圧179/98mmHg。えっ、測り直しても同じくらいだ。
私自身医師としては血圧の管理は甘く、他に持病のない方に関しては、「上の血圧が150を超えなければいいよ」と言っていたが、このケースでは「観念して薬を飲みましょう」という状態である。だが、自分はコツコツと継続していくことが苦手であり、毎日血圧を測ったり、薬を毎日飲み続けることができそうもない。
減塩、減量、筋力をつけることが自然降圧に有効と言われているが、理屈以上にそれを実践した患者さんに降圧が得られたのを体験している。私もできる範囲で自然降圧を図ってみよう!

まずは、自分用に血圧手帳を作ることにして、昼寝から起きた時にクリニックの血圧計で測ることにした。
ほぼ同時期に、患者さんに実演してみせるために自分でも試験的に肥満治療薬のウゴービを使っている。
ウゴービはもともと糖尿病治療薬であったGLP-1作動薬を肥満治療薬として開発されたものだ。もともと、前身である糖尿病治療薬のオゼンピック、ビクトーザ、リベルサスを美容外来などで、自由診療内でダイエット目的で処方されていたようだ。開業当時、「肥満外来も開設予定です」と記したところ、早くも肥満外来の受診があった。病歴、生活歴を聞き、生活指導の話をすると、付き添いに来たお父さんが、
「あの痩せる薬があると聞いたのですが、処方していただけないでしょうか?」と。
そもそも、私が肥満外来を開設しようと思ったのは、糖尿病薬がダイエット目的に使われているのを知って、「正当な」ダイエットをするもが目的であった。そのように説明したが、患者さんが帰ったあと、看護師さんの一人が「結果を出すことも必要だから、処方したら」と言った。それは自分の主義に反するからと、生活指導中心の肥満外来を進めてきていたが、高度肥満になっている人はそれなりの理由があり、ポテトチップス、カップヌードル、ファーストフードなど、いわゆるジャンクフードの過食がやめられない人が多いのである。真面目に取り組んで10Kg程度の減量に成功する方もいるのだが、停滞期が続くといつの間にか来なくなってしまう。
そういう現実に触れ、GLP-1作動薬の使用も検討したが、こんどはすずけんさんが製薬会社の方を連れて当院を訪問し、
- 糖尿病以外の人に保険適応はなく、自費診療になること
- 自費診療で処方し、副作用が出たとしても、我々は責任が持てない
- 自費診療の場合、薬局では処方できないので、院内処方になるが、薬価が高く、患者さんが中断したら、残りの薬代は病院の損失になる。
と伝え、「どうか、薬の適正使用を」と訴えられた。元々薬物治療に積極的ではなかったこともあって、採用を諦めた。
その後、2024年2月22日より、ウゴービが販売開始されたが、保険適応となるには施設要件として、
「施設内に、学会専門医(日本循環器学会・日本糖尿病学会・日本内分泌学会)いずれかを有する常勤医師が 1 人以上所属しており、本剤による治療に携われる体制が整っていること。また、自施設に所属していない専門医がいる場合は、当該専門医が所属する施設と適切に連携がとれる体制を有していること。各学会のいずれかにより教育研修施設として認定された施設であること。常勤の管理栄養士による適切な栄養指導を行うことができる施設であること」
というものがあり、今から専門医をとるために大病院に研修に行くのも、常勤の管理栄養士を雇うことも現実的ではないため、取り入れを諦めた経緯があった。知人から、「ねえ、痩せる注射あるんでしょう?できない?」と言われた時、「施設基準を満たすことができないので、使えない」と断らざるを得なかった。
ところが今年の夏、ノボ ノルディスク ファーマ株式会社の方が当院を訪問して、「自由診療でウゴービを取り入れてみませんか?」と提案してきた。施設基準が厳しすぎるため、要件を満たして肥満外来を開設している病院が少なく、気軽にいくことのできるクリニックはたとえ自由診療にしても需要があるだろうとのことだった。なお、基準を満たす患者さんに使用した場合は副作用が出た場合、製薬会社が対応してくれるというメリットがあった。
肥満外来に几帳面に通ってきてくださっているが、一向にジャンクフードがやめられず、体重も動かない方に勧めてみた。
すると体重が少しずつ減ったのをきっかけに、ジャンクフードの代わりに果物を食べる等、生活改善にも取り組むようになったのである。結果が見えることの効果を体験し、高度肥満の方、肥満関連疾患を持つBMI27以上の肥満の方で体重が動かない人に勧め、ある程度の効果をみた。
そんなおり、ウゴービの最小容量と最大容量の注射が、SDという針が内蔵されていて皮膚に押し当てるだけで注射ができるものが品切れになり、MDという自分で針を付けて打つものを使わざるを得なくなったのである。操作が複雑なので、患者さんに説明するのに手順を覚えるために、自分に使用してみることにした。スタート時は、身長153.5cm,体重60.2Kg、BMI25.5の軽度肥満、患者要件は満たさないが、股関節変形症、高血圧と肥満関連疾患を二つ持つ肥満症である。
なかば手技を覚えるために導入したウゴービだが、お腹が空いてイライラする感覚がなくなったのである。診察の合間に、頂き物のお菓子をつまむことが減った。お酒を飲みたい欲求も減り、ノンアルワインで前菜風のおつまみで晩酌するのも、くつろぐ時間を得るためであった。目にみえて体重が減り、57Kg台まで落ちた。(ちなみに、もう一度ウゴービを使ったら、その後は7号食ダイエットで減量の仕上げをする予定です)元々汁は全部飲まない習慣だったが、そば、うどんを食べても汁は飲まないようにした。そのためかどうかわからないが、少しは降圧効果が出てきたようだった。
それにしても、血圧を測るだけでもなかなか続かないものだなあと、几帳面に記録してくる患者さんを改めて尊敬する。
本格的な春がきた時点で、150/90mmHg未満で安定させることができたら降圧剤は使わない予定である。さて、院長の降圧、減量は成功するかどうか?結果報告するのでお楽しみに。