血便と下血|エルムクリニック 内科・消化器内科|長野県飯田市の内科・消化器内科

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血便と下血

 当院では、消化器内科を標榜しているためか、便に対するトラブルを訴えてくる患者さんが多い。

下痢、便秘、便が細い、排便時に出血があった、黒色便があった、検診で便潜血陽性となった。

後者3つは大腸カメラを強く勧めている。

というのは、大腸疾患の有病率が高いからだ。

開業してから、優に二桁の大腸がん患者さんを発見したが、すべて便潜血陽性と血便、下血である。

肛門経由で出血がある場合、専門用語では血液の混じった黒い便を下血といい、血液が混じった赤い便を血便という。黒い便になるのは、胃酸により、血液中のヘモグロビンの中の鉄が酸化されて黒くなるためで、大腸より上の方の出血のことが多いし、逆に赤い便になるのは大腸や肛門からの出血のことが多い。よって黒色便の場合は先に胃カメラをすることを勧めている。胃潰瘍、十二指腸潰瘍を発見することもある。

出血の程度は、排便の始末をしたときに紙に少し血が付く程度から、下痢とともに、あるいは直接血だけが大量に出る出血まである。

勤務医時代多く経験した血便は、虚血性大腸炎と憩室出血だった。これらは、一時的に比較的多く出血するため驚くが、短期間で回復し、多くの場合後遺症を残さない。怖くない血便の例だ。虚血性大腸炎は大腸への血流不足によって腸管粘膜に炎症が起こるために生じ、多くは痛みを伴う。虚血性腸炎を疑う症例は診断を確実にするために、近日中の大腸カメラを勧めている。それに対して、憩室出血は、大腸憩室(腸管にあるくぼみ)からの出血で、憩室の粘膜が他の部分より薄いため出血しやすいので生ずるのだが、多くは痛みを伴わない。憩室出血は自然に止まることが多いが、ときには医療的な介入を必要とする。

それに対して怖い血便・下血は大腸癌だろう。大腸癌による血便の多くは出血量が多くなく、時々という場合が多いので、放置する人もいるが危険である。大腸がんは転移、浸潤の速度が遅く、普通に診断できれば死に至ることは少ないのに、現在、死亡率のトップとなっているのは、検査を躊躇しがちなことが大きいだろう。痔を併発していると特に放置しやすいので気をつけましょう。痔が原因だからと思わずに、一度は大腸カメラを受けましょう。その痔は生命の危険ということに関しては怖くない病気だが、慢性病であり、程度によってはQOL(生活の質)を下げてしまいますね。QOLを下げるような痔の場合は、肛門科に紹介することもある。

 他に慢性的で、生活の質を下げる血便をみる疾患に潰瘍性大腸炎とクローン病があり、これらは痔と違って医療的な介入を必要とする。特に潰瘍性大腸炎は近年増えてきて、頻回に下痢に伴う血便をみる場合から、時々少量の出血がある程度まで様々な病態が存在する。当院では経口薬で寛解が見られる場合を治療対象としている。

感染性腸炎でも、しばしば下痢に伴って血便をみる。食中毒性のO-157を始めとする病原性大腸菌、カンピロバクター、サルモネラなど、食中毒性ではないが、血便の中には、アメーバー赤痢やクラミジア直腸炎にも遭遇することがあり、この二つは性感染症である。

他に、血便をみる疾患は、宿便性直腸潰瘍、放射線治療のあとに起こる放射線性腸炎、薬剤性の潰瘍など、多岐にわたる。様子をみていい場合も、すぐに医療的介入が必要な場合もありますが、自己判断せずに医療機関を受診してくださいね。

P.S.コーヒーに生涯をかけている人の後編は執筆中です。時間が掛かりそうなので、こちらを先に公開することにしました。